加茂小学校における、防災教育の充実に向けた取組について-タブレットを活用したフィールドワークを通して、児童が主体的に地域の防災について考えていくための取り組み-

長野市立加茂小学校

1 はじめに

 長野市立加茂小学校は、県都長野市の西部に位置し、善光寺の近くにある。学区は、幼稚園から大学まで、多くの学校がある長野市の文教地区となっている。また、茂菅や小田切のような山間地もあり、変化に富んだ広い学区を持っていて、230名の児童が通ってきている。

 ここで、本校で防災教育を中心に実践した、実践的安全教育総合支援事業の取組を紹介したい。

2 防災教育の題材と児童に育みたい力

 加茂小学校の通学範囲は、茂菅、裾花台から往生地、妻科と広範囲である。周囲の土壌は、凝灰岩質の山々が多く、校歌にも謡われている旭山付近には、土砂が崩落し山肌が露出している場所がいくつも見られる。子どもたちは、当たり前の景色としてとらえ、毎日通学している。

 長野市の防災マップ(図1)を見ると、加茂小学校地区の、多くの児童の住宅が、土砂災害警戒区域または、土砂災害特別警戒区域に入っていたり、地滑り危険箇所に入っていたりしている。有事の際には、身の安全に気をつけなければならない地域で生活していることがわかる。近年、日本各地で大規模な災害が発生している。痛ましい話が聞かれるが、それは決して他人事ではない。南海トラフ地震が数十年以内に発生するということも言われている現在、いざというときに自分の親兄弟など、大切な人、自分自身をどう守ればいいか、題材「地域の防災を考えよう」に入り、自分事として考えさせたい。

そこで、近年に発生した3つの大地震について学び直すことから始める。そして、これから発生が予想される南海トラフ地震の存在について学ぶ中で、地震による被災が自分事としてとらえられるようにしたい。そして、いざという時、どのような場所が安全なのか、危険なのかを判断できるようにするため、街へ出て周囲の状況をとらえる中で、避難する場合により安全なルートがどのような道か、思考し判断できる力を養っていく。

図1

3 防災教育実践内容

  1. 実践学年 加茂小学校4年B組(男子8名女子11名 計19名) 
  2. 題材名「地域の防災を考えよう」
  3. 実践日時及び内容

①8月30日(月)過去に起きた地震やこれから起きる地震について調べたり確認したりする。地震が起きたらどうするか、安全に避難する方法を考える。

②9月9日(木)学校における防災教育の振り返り 防災倉庫の確認

防災倉庫には食料が入っていました。(シチュー、ビスケット、クラッカーなど)
他に飲料水、必要な生活用品(簡易トイレ、ブランケット、トイレットペーパーなど)安全用のヘルメットも入っていました。何が入っているか分からなかったので、今回中を見ることができて良かったです。

児童の感想より

③9月14日(火)地域避難所確認(加茂小、教育学部、西部中、長野商業)Field On活用

私たちが生活している学校は避難場所になっていると知りました。加茂小避難場所マークがどこにあるか分かったし、他の学校にもあることが分かりました。地域の避難場所を知っておくことがとても大切だと感じました。


児童の感想より

④9月 21日(火)水害ハザードマップで被害の出そうなところの確認

⑤9月24日(金)裾花川沿いへ行き、水害が起こりそうな所の確認 Field On活用

裾花川が氾濫したときどのような危険があるか考えることができました。堤防があったり、用水が流れていたり、知らないことがありました。大雨の時は近づかないようにすることは大事だとあらためて思いました。

児童の感想より

⑥10月1日(金)安全、危険な所の確認をし、学校周辺の安全箇所、危険箇所探し

⑦10月8日(金)チームごとでフィールドワークと報告会 Field On活用(公開実践授業)

⑧10月12日(火)各自で学習のふりかえりとまとめ

・学校には防災倉庫がありました。中には食べもの、飲み物、生活用品などが入っていました。家庭には防災グッズを用意したり、棚が倒れないようにネジで固定してあったりしました。家庭でもきちんと工夫しているなと感じました。地域ではいろいろな所に防災倉庫がありました。消火栓や防火水槽もありました。地震の時には塀が倒れないように、ネジや金具でとめてあるところが多かったです。このように色々な場所で防災の工夫を見つけることができました。防災を学んで、災害の時にどうすればいいのか、災害の時はどういう所が安全か分かりました。
・防災を学習して、地区には安全な所より、危険を感じるところの方が多かったのに驚きました。防災倉庫の中を見たときは、予想していた物よりも沢山の物が入っていて「凄い」と思いました。これからの自主学習で、防災のことも調べていきたいです。
・地震の時には塀が倒れたり、大きな石が転がったりして危ないと思いました。地震が起きたときはどの道を通ればいいか考えられたし、家から近い避難場所にも気づけたりできたので良かったです。家庭にはまだ準備していない物があるので、しっかり準備していきたいです。避難生活になったときは自分のできることをしていきたいです。そのためにもこれからも色々と学習したいと思いました。

児童のまとめより

4 実践をしてみての成果と課題(○・・・成果 ●・・・課題)

○社会科の学習内容を、地域の学習につなげ、調べ学習を中心に展開できたことは、児童が生活する身近な場所や建造物などに注意を向けて考えることができたのでよかった。

○ハザードマップから、自分たちの住む地域の特色、危険があることを知り、実際に見て歩いて確認できてよかった。

○児童は「どのような所が危険か?」といった問題意識を持ち、実際にフィールドワークを通して様々な気づきを得ることができた。また、今後どのようにしていくといいか考えるきっかけが持てた。

○タブレット端末を活用し、アプリケーション「Field On」で写真と位置情報、コメントが地図帳に即座に反映された。今年度から導入されたアプリケーション「オクリンク」も活用し、児童は学習した内容がまとめやすかった。また、友だちと交流がしやすく、考えを深めていくのに効果的であった。

●コロナ禍でもあり、他学年児童、地域や家庭とともに、交流を通して防災を考えていけるとさらに良いと感じた。

●発信発表の機会がうまく確保できなかった。今後、発信まで含めた展開を考えて実践していけるといい。              

(文責 教諭 北島智明)