4生徒の様子

ⅰ 自分事として捉えていたA生

 台風19号水害に関する動画を見た際の学習カードには,「悲惨で,こんなにも恐ろしいものだと分かった,人々を困らせるもの,もし災害が起こってしまったら大変。生活にも影響が出る」と,同じ中学校の校舎が泥水に浸かってしまった様子を見て,自分事として考えながら考える姿が見られた。また,同時に視聴した千曲川の過去の水害に関する映像についても,「過去にももっと大きな洪水が何回もあったなんてとても恐ろしく思った。昔の人は洪水に備え,みんなの知恵で何人もの命を守ってきたと思ったら泣いてしまう。記録を洪水水位標として残したり,寺の柱につけたり,洪水の怖さを伝えようとしていてかしこいと思った」と記述していた。これらの事から,A生は先人の知恵や生き方に思いを寄せながら災害について考えることができていたのではないかと感じた。

ⅱ 様々な見方で考えたB生

 B生の自宅は,高位の平坦な段丘面上の,河川や急傾斜地から離れた場所にある。そのため,自宅周辺で水害などの災害が起こる可能性が低く,災害というものをあまり身近に感じてはいなかったようであった。

 三峰川堤防沿いでフィールドワークに行ったB生は終始その堤防の高さにこだわっていた。写真を撮る際に注目したポイントとして「堤防の上と下の高さ,堤防の高さに注目して写真をとってみたらいいと思いました」と記述している。実際に堤防を目の当たりにしたことで,その高さに気付き,この堤防が氾濫するとはどういうことなのか,自分なりに想像しながら見ていたと考えられる。

 B生の単元の最後の振り返りには,以下のように記述されていた。

防災学習を学んでみて,改めて伊那市や災害について知ること,考えることができた。千曲川は十何回も氾濫したり災害をもたらしたりして,昔の水害は家1個ぐらいつかるぐらい水が来たり,水害の大きさを知ることができた。堤防があるからといって全然安全な訳じゃないし,霞堤防だってある意味災害をもたらすことが分かったので,普通安心できるわけじゃないことを学んだ。もっと危機感を持って災害に備えたいと思った

 本来,集落を浸水被害から救うための霞提でさえ,考え方によっては災害となる。B生の中には,霞提によって救われる人々のことだけでなく,逆に被害に遭ってしまう人々のことまで思いを馳せて考えていたのではないか。