1.はじめに

 本校は、県都長野市の西部に位置し、善光寺の近くにある。学区は、長野市を代表する裾花川の近くにあり、幼稚園から大学まで、多くの学校がある長野市の文教地区となっている。また、茂菅や小田切のような山間地もあり、変化に富んだ広い学区内から、220名の児童が通学している。

 長野市の土砂災害ハザードマップを見ると、本小学校区の多くが土砂災害警戒区域または地滑り危険箇所に入っている。有事の際には、身の安全に気を付けなければならない地域で生活している。そこで、本校では、土砂災害ハザードマップにそれぞれの児童の家の位置を記した所在地マップを作成している。(下図は児童の家を除いたもの)

2.学習の始まり

 防災の学習で、日本にはどのような自然災害があるのか考え、これまでに大きな地震や水害などに見舞われてきたことを学んだ。

また、長野県内にも大きな地震が発生していることを知り、今後も大きな災害が起こる可能性があることも学んだ。そして、もしも災害が起きたらどうなるのか考えていく中で、「命や自分たちの生活を守るためにどのように行動したらよいのか、災害からくらしを守るために誰がどのような取り組みをしているのか調べていこう」という課題が決まった。

 学習が進む中で、地域の安全・危険な場所に関心をもった。そして、「地震が起きたときに周囲の状況がどのようになるかを考え、危険な場所を回避するために、自分の住んでいる地域を実際に見て回りたい」という思いが高まった。

 そこで、フィールドワークを行い、各々が調べてきた施設や設備の安全性・危険性について考えたり確かめたりすることを通して、一人一人が防災や安全への意識を高め、主体的に防災や安全の学習について取り組んでいった。

3.学習内容

①10月25日 :自分たちが住んでいる長野県と教科書に出てくる静岡県の地形を比べ、どのような自然災害があるか考え、課題を設定した

②10月26日(防災アーカイブの活用):過去に日本で起きた大きな地震や長野市で起きた大きな地震(神城断層地震)・水害(平成元年台風19号災害)について知った。

【子どもたちの気づき】

・「地震の被害がすごかったけど、亡くなった人がいないなんてすごい。どうして?」

・「川の水があふれて、いつもは道路や畑のところが水の中になっていて怖い。」

③10月28日:地震や水害が起きると自分たちのくらしはどうなるのか考えた。

④11月2日:自分の家では、地震や水害に備えてどのような取組をしているのか、各自タブレットで写真を撮り、発表した。

⑤11月4日(防災倉庫の見学):学校では、災害に備えてどのような取組をしているのか考え、防災倉庫の存在や避難場所の看板に気づき、だれが設置しているのか疑問をもち、実際に確かめることにした。

【子どもたちの気づき】

・「長野市と住民自治協議会の防災倉庫があった。2つもあってすごい。」

・「予想していたものよりもたくさんの種類があったし、数もたくさんあった。」

⑥11月7日:長野市では、災害から市民を守るためにどのような取組(ハザードマップ・ 避難所の設定)をしているのか知った。

⑦11月10日:ハザードマップに載っていない身近な危険や安全対策について調べる活動を行った。

 自分の家から避難所へ行く場合に気を付けることや安全のためのものを探す目的で通学路を中心に歩き、災害が起きたときに危険があると感じた場所や安全のための工夫と感じた場所の情報をタブレット端末に記録した。地域の方(区長)、廣内先生・大学生(信州大学)に協力していただき、地区ごとに班をつくり、調査活動を行った。「Field On」(マップアプリ)を使い、班の仲間で話し合いながら、危険だと思う場所や安全設備だと思う場所を記録していった。

【子どもたちの気づき】

・「空き家の建物の壁にヒビが入っていて、大きな地震が来たらくずれるかもしれない。」

・「石が積んであるところは、くずれてきたら危ない。」

・「街灯は上に電気があって、落ちてくるかもしれない。上も気を付けなくてはいけない。」

・「電柱がたくさんあるけれど、倒れてくるかもしれないので、近くを歩かないように気を付けないといけない。」

・「この交差点は、普段も車がぶつかる事故があるので、避難の時には、すごく危険な場所だと思う。」

・「崖崩になりそうなところがあった。」「崖崩にならないように補強してあった。」 ・「川の水があふれないように広くしてある。」

・「加茂神社の横にも防災倉庫があった。」

・「神社の柵や鳥居は、倒れないように工夫してあった。」

自分たちが住んでいる見慣れた町・道路だが、災害が起きた時に避難するということを前提に改めて見なおしてみると、今まで気付かなかった発見がたくさんあったようだ。

災害時を想定し、実際の避難ルートになりそうな場所について検証したことは、大きな災害が起きたときに、自分はどのように避難すると安全なのかということを少し現実的に考えることができたことにつながった。自分の命を自分で守るために、とても大切な学びができたと思う。

⑧11月下旬:各班の調査データが統合された防災マップを見ながら、安全・危険な施設や設備について考え、確認をした。また、各グループで特に知らせたい施設や設備を選び、タブレット(ミライシード)にまとめ、発表しあった。

4.終わりに

  この学習では、地域の方にも参加していただいた。地域の方に「この場所は、土砂崩れ防止の工事をしたばかりだから安全だよ。」や「向こうの崖は、大きな地震の時に崩れたんだよ。」などと、地域のことを詳しく教えていただき、地域の方々とつながりをもつことができたことがよかった。

  また、「Field On」(マップアプリ)を使うことで、子どもたちが実際に町を歩いて記録したことを簡単にまとめることができ、結果がすぐに見えることで、子どもたちの学習意欲にもつながった。そして、各地域で記録した子どもたちの情報を手軽に共有することで、友だちが調べたことの確認をスムーズに行うことができた。

子どもたちは、初めに災害の怖さを学んだ。しかし、その災害に対して、多くの公助があることを知り、自分や周りの方の命を守るために自分は何ができるのかも考え、防災意識を高める学習となった。