【長野市立清野小学校】「命を守る行動」~保護者とともに地域に根ざした防災教育~
1.はじめに
本校は長野市南部の松代町内にあり、千曲川の右岸に位置する。学区内は、学校西側で千曲川堤防沿いに位置する1区(松代町岩野地区)、学校の南東で南側に山が連なる2区、学校東側で大部分は平地部の3区(ともに松代町清野地区)の3地区に分かれている。児童数は22名で、徒歩で集団登下校をしている(下校については、子どもプラザ利用の児童を除く)。
学校及び学区のほぼ全体は、令和元年改訂の長野市洪水ハザードマップで5~10mの浸水予測が出されている。また、地域の南側には山が連なっているため、土砂災害警戒地域になっているところもある。この地域は水害常襲地域でもあり、過去には江戸時代の『戌の満水』(1742年)や昭和57年の台風18号災害で浸水被害を受けている。なお、戌の満水の際には、学区東端のやや小高くなった部分の上にある離山神社の境内に多くの人が避難したとの記録がある。
令和元年の台風19号災害においては、学区内で大きな被害はなかったが、千曲川堤防の上端ぎりぎりまで水が迫り、多くの子どもたちが家族と共に親戚宅や指定避難場所へ避難する等、有事の際には身の安全について考えなければならない地域である。
2.今年度の防災学習
今年度は、「命を守る行動」に焦点をしぼって取り組んだ。親子防災教室で「地域の危険個所を調べよう」を全校で行い、その後、高学年児童が「命を守る行動を考えよう~マイタイムライン作り」を行った。
3.取り組みの実際
(1)防災教室「地域の危険個所を調べよう」 9月3日(火)
①ねらい
・いつ起こるかわからない自然災害の怖さを知り、自分たちが毎日通っている通学路にはどのような危険があるのか、万が一の場合にはどのような行動をとればいいのか考えることができる。
②参加者
・全校児童22名、保護者22名、学校職員11名、廣内 大助 先生(信州大学教育学部教授・学校防災アドバイザー)廣内先生の研究室の学生
③活動の概要
・各自、水害時に通学路での危険な場所や安全な場所についてタブレットで撮影したものを持ちよった。
・持ち寄った通学路での危険や安全について、地区ごと児童と保護者で「なぜ、危険だと思うのか」「なぜ、安全だと思うのか」を考えてマップに記入し、避難するときに大切にすることを発表し合った。
④活動後の声
・千曲川に近い通学路には危ないところが多いと分かったので、これからは意識して通りたい。地震の時には、ブロック塀が崩れてくるかもしれないから、なるべく離れて歩きたいと思った。(児童)
・を地区で話し合うことで、自分では気づかなかった危険なところ知ることができた。岩野地区は、昔から洪水の被害があるので、大雨の時には注意したい。身の回りの危険な場所を知ることができてよかった。(児童)
・大人の目線だけでなく、様々な学年の意見を聞くことで、自分では気づかなかった危険な場所を知ることができるので様々な年齢層で考え合うことが大切だと感じた。タブレットで写真を撮ってくることで、実際の場所をイメージすることができた。(保護者)



⑤今後の展望
・児童、保護者を交えて取り組むことで様々な年齢層で考え合うことができた。水害時においては学区内に指定緊急避難場所が一つもないことを踏まえると、全員が同じ課題意識を持って取り組むために、地域と一体となって考えるこのような機会は非常に大切である。
(2)「命を守る行動を考えよう~マイタイムライン作り~」
①ねらい
・水害発生時、命を守る行動をとるために、避難レベルのどの段階で逃げることが必要なのかを、マイタイムライン作りから考える。
②活動の概要
・長野市防災ハザードマップをもとに、水害時、自分が避難する場所を想定し、避難経路を考える。(徒歩での移動、車での移動を想定)
・5段階の警戒レベルと実際の天候、災害の様子の画像から、とるべき行動について学習する。(児童から出された避難行動をカードにする。)
・自分の家の場所、避難想定場所の位置関係から、警戒レベルごとに取るべき避難行動を考える。(考える際には、避難行動カードを使用する。)
・地区に分かれて、避難行動を決定した理由を話しながら、マイタイムラインを発表する。


③児童の様子
・警戒レベルの避難行動を参考にしながら、自分の家族構成や、避難想定場所までの距離から、自分はどのレベルでの避難が必要なのかを考えていた。
・親子防災教室で地区ごとに出された危険個所を再確認し、避難想定場所までの所要時間を考え、避難完了から行動を逆算して考える児童がいた。
・警戒レベルの行動指標からマイタイムラインを一から考えることは、大人でも難しい。避難行動例のカードがあることで、天候状況や避難場所までの想定時間に合わせた避難行動を具体的に考えることができた。
④児童の感想から
・その人の状況によって避難するタイミングは違うけれど、家族の中で1番避難までに時間がかかる人を中心に避難行動に移れば、命を守ることができると思った。
・防災教室での危険個所と避難経路を合わせてみると、自分の家は、危険度が高いと思った。警戒レベルの避難行動はわかったけれど、自分の家の場所だと、もっと早い避難行動が必要だと思った。
・災害はいつ起こるのかわからないので、あわてて避難しなくてもいいように避難道具の準備をしておくことが大切だと思った。
・警戒レベルの学習をして、どのタイミングで避難すればいいのかがわかった。その時の天候や警戒レベルを知ることが大切なので、災害時にはラジオやテレビの情報をしっかりと聞きたいと思った。
⑤今後の展望
・個々の状況に合わせて考えたマイタイムラインであるが、実際の災害時に有効であるかは課題が残る。マイタイムラインを活用するためには、避難想定経路を使っての時間計測や避難弱者の立場での避難想定など、実際に避難をしてみることが必要であると感じた。
4.終わりに
令和元年度から始まっている本校の防災学習は、これまでに「地区の危険個所」「水害について」「土砂災害について」「実際の避難行動について」と地区が抱えている課題について学習を積み重ねてきた。このことにより、清野小学校の子どもたちの防災に対する意識は高くなってきていると感じている。本年度は、「命を守るためのマイタイムライン作りについて」意識を広げることができた。
清野小学校は、年度末をもって閉校をむかえ、来年度からは全校児童が松代小学校へ通うこととなる。松代は、令和元年の台風19号災害で大きな被害を受けた地区である。近年の異常気象等により自然災害のリスクが上がっている中、自然災害は身近なものとなっている。次年度以降も「地域の自然的特徴、自然災害の危険性を知る」「自分の命を守る行動を考える」等を児童の意識に位置付けることを大切にしてほしい。
(文責 防災教育係 長浦宏樹)