防災教育を中心とした実践的安全教育総合支援事業の取組について

-児童が自ら考え行動できる能力を養うための取組-

1.はじめに

長野市立加茂小学校は、県都長野市の西部に位置し、善光寺の近くにある。学区は、幼稚園から大学まで、多くの学校がある長野市の文教地区となっている。また、茂菅や小田切のような山間地もあり、変化に富んだ広い学区を持っていて、202名の児童(平成29年度)が通ってきている。

2.加茂小学校の防災教育について

長野市の土砂災害ハザードマップを見ると、本小学校区の多くが土砂災害警戒区域または地滑り危険箇所に入っている。有事の際には、身の安全に気を付けなければならない地域で生活している。そこで、本校では、土砂災害ハザードマップにそれぞれの児童の家の位置を記した所在地マップを作成している。

また、現在の学校防災アドバイザーの指導の下、昨年度、信州大学と特定非営利活動法人Dochubuが開発した防災学習支援用ソフトウェアを活用した防災マップづくりの実践を行った。このソフトウェアは、タブレット端末とWeb-GISを連携させることで、防災情報収集を効率化し、限られた時間の中で児童が防災についての思考・判断をより深められ、かつ学年に応じた取組をサポートでき、協働的に防災マップを作成していけるものである。

3.活動状況

(1)活動のテーマ・参加者

自宅で発災したときに避難所までの避難経路を考える

3学年児童28名

(2)活動のきっかけと目的

 子どもたちが、マップの中から自分たちの家を探し、その地図に書き込まれている線の意味を知ったときに、「いざというときに家から安全に小学校まで避難することができるのか確かめたい」という想いが高まった。

 そこで、いざというとき、自宅から安全に避難することが本当にできるのかを考え、自宅から避難所である学校までのルートが本当に安全なのかどうかを確かめることを通して、一人一人が防災や安全への意識を高め、主体的に防災や安全について取り組む。

(3)活動内容

9月9日

野外活動で、大地震になったときに危険と感じた情報をタブレット端末に記録しながら収集していく。

班ごとに調査活動

9月12日

各班の調査データが統合された防災マップをみながら考察する。

調査後、班での話し合い

9月14日

野外活動で、同じスタート地点からそれぞれの班が決めたルートを通り、避難所である小学校までの避難経路が安全に行けるか調査する。

9月20日

各班の調査データが統合された防災マップをみながら、適切な避難ルートはどこなのかや、何に注意すべきなのかについて考える。

 その後

 調べたことを基に、防災マップを作製した。

全体で発表
防災マップの様子

4.事業の成果及び今後の課題

  • ICT(タブレット端末)とGIS(地理情報システム)を活用した防災学習を実施することができた。
  • 日常的に目にしてきた裏山や通学路などを防災の視点で見ることができた。
  • 班での活動を全体に紹介する必要があるので、伝える力が向上した。
  • タブレット端末を使った学習であったので、ICT活用の力が向上した。
  • タブレット端末にコメントを入力するので、習いたてのローマ字を習得する力やタイピングする力が向上した。
  • 野外活動で自ら見て回り、実際に安全に避難できるのか考え合ったことで、自分たちの住む地区の安全について考えを深めることができた。
  • 災害時にどこでどのくらいの被害が想定されるか仲間と考え・話し合うことで、思考力判断力を働かせながら主体的・対話的に学ぶことができた。
  • 避難ルートについて考えるうち、「100%安全な道はないんだ」と気づく子が表れた。これまでの見方考え方が変わり、深い学びが達成できた。